ツイッターでイラスト垢をつくりました(@NaMiNeK0)。
いざイラストを「フリーアイコン」として公開したところ、まったく知らない方に引用リツイートで
と言われました。
私は身に覚えがまったくなかったので、あままつさんに直接コンタクトを取りました。
結果として、パクリではないと回答を頂きホッとしています。
最近では、このような第三者からの「このイラストはパクリだから、描くのやめろ」というリツイートやつぶやきが増えています。
そしてこのリツイートを受け、多くのお絵描きさんが消えていくのを見ました。
「パクリじゃないなら、堂々と描き続けたらいい」という意見も目にします。私も以前はそう思っていました。
実際に体験し、パクリだといわれると…正直それどころじゃないです。もう辞めてしまいたいと感じてしまいます。
もちろん第三者からの摘発によって、実際にパクリ問題が分かることもあります。
でももし間違っていたら?その一言で、誰かの才能を摘み取ったのだとしたら?
今回の記事は、あままつさんとお話させていただいた上で、指摘された側と元の絵を描いた人とされた側の見解をお話させていただきます。
ツイッターでフリーアイコンを制作しているイラストレーター。
現在ではフリーアイコンもやりつつ、ご依頼を受けてオリジナルアイコンも制作しています。
Contents
著作権とは
そもそも著作権とは何かご存知でしょうか。実は以前も著作権について話題になったとき、一度記事に書かせていただきました。

この記事でも著作権について触れていきます。
著作権とは、自分が作ったイラストなどの作品を「私のものである」と保証される権利のことです。
著作権の権利は大きく分けると
- 財産権
- 著作者人格権
の2つがあります。なんとなく聞いたことがあるのではないでしょうか。
しかし、どのサイトや本にも難しく書かれていて、肝心な部分が分からないですよね。
今からできる限り分かりやすく説明するので、一度目を通してみてください。
財産権は”作品を守る権利”
財産権とは、誰かの作品をコピーさせない権利のことをいいます。
「コピーさせない」というのは、作品を作ってない方が無断でどこかしらにアップしたり、販売させないということです。
SNS上で公式のイラストを、引用なしで貼り付けるのは財産権違反です。
また、イラストをトレスして
と主張したり、ポーズや構図をよそからもらってきたり。これらもすべて著作権侵害にあたります。
多くの方が、”著作権=財産権”という認識だと思います。
著作者人格権は”作者の名誉を守る権利”
著作者人格権は、イラストを描いた方の名誉と「作品の思い入れ」を守るための権利です。
財産権は作品自体を守りますが、著作者人格権は、イラストを描いたときに感じた感情や思いを守ります。
自分のイラストを誰かに盗られたり、丸パクリされたらつらいですよね。
たとえ二次創作イラストであっても、ポーズや色の塗り方を完全に真似されたら憤りを感じるでしょう。
著作者人格権は、これらの感情を守るためにあると考えてください。
著作権を放棄することはできますが、著作者人格権は法律上でも絶対に放棄することはできません。
感情は相手に手渡せるものではないので、当然と言えば当然ですよね。
どんな理由があったとしても、イラストレーターやクリエイターの作品を盗むことは、断じて許されません。
財産権は、作品自体を盗まれないように守る権利。
著作者人格権は、作者の気持ちを守る権利。
「誰かに似ているイラスト」は著作権侵害?
お絵描きさんの間でも、トレスがダメだというのはもはや常識です。
しかし、ポーズが構図が似てしまった場合、著作権侵害にあたるのでしょうか?
誰かのイラストに「偶然似てしまった」という場合は、著作権侵害に当たりません。
パクリにはならないのです。
シェイクスピア以降はすべて二次創作である。
この言葉は、作家さんやイラストレーターなど、創作を行っている方は一度は耳にしたことがあるはずです。
時代によって移り変わる人気の絵柄、構図、ポーズや構成は、今のご時世ほとんど出尽くしたといっても過言ではありません。
実際に少年漫画では、剣を振り下ろすシーンは似たり寄ったりだったり、ドラゴ〇ボールに似た変身シーンもたくさん描かれています。
多くのお絵描きさんが、
という悪意のない、第三者の「正義感」に苦しめられているように感じます。
そして、たくさんのお絵描きさんが描くことを挫折し、誰かに需要のあるイラストを掲載しなくなってしまいます。
著作権問題は”親告罪”です
著作権問題は第三者が口出ししても、何も解決しません。
親告罪とは、第三者が「パクリだ!」と言って罪になるのではなく、元の絵を描いた人からの摘発によってパクリかどうかが明らかになります。
つまり、第三者がやらなければならないのは
公の場で無実かもしれない人を晒し上げるのではなく、元の絵を描いたであろう人に連絡を入れることです。
公の場で晒し、もし無実だった場合、第三者はイラスト製作者に対する「名誉棄損」および「プライバシーの侵害」で罪に問われる可能性があります。
こちらの記事で、実際に第三者へ裁判を起こした方の詳細を確認できます。
プライバシーの侵害については、「最低」「クソ」「ゴミ」「消えろ」など、明らかな誹謗中傷が確認できれば訴えることが可能です。
元の絵を描いた人からも「パクられた」と言われたら
あなたにイラストをパクったつもりが全くなく、それでも元の絵を描いた人に「パクられた」と言われたら?
この場合は、明確にパクっていないと分かる証拠が必要です。
参考資料や自分がイラストを描く様子が分かるものが証拠になります。
証拠があれば、元の絵を描いた人及び第三者に名誉棄損として訴えることができます。
もちろん、訴えたいと思う人の方が稀です。しかし可能性は0ではないので、発言などは十分に気を付けましょう。
実際に著作権侵害になったケース
ここでは、どのような事例が著作権侵害として認められて、どれが認められなかったかを見ていきます。
日本の著作権問題は非常にあいまいで、なぜ認められなかったのか分からないようなケースも多くあります。
黒猫イラスト「フラねこ事件」
猫イラストの頭部のみを切り取り、フラダンスしている胴体と組み合わせた「コラージュ作品」をインターネットに公開したケースです。
猫のイラストを描いた方に著作権及び著作者人格権侵害を主張し、裁判にまで至りました。
この事件では、コラージュした作品をインターネットに無断で載せ、さらにイラストを使用したパンフレットを譲渡していたことから、310万円の損害賠償請求が求められました。
イラストに対する著作権侵害が認められました。
販売はしていませんが、作品をコラージュするといった作者の気持ちを踏みにじる行為、無断でパンフレットに使用して譲渡したことが判決を下しました。
最近では「クソコラ」などが流行っていますが、度が過ぎれば訴えられることもあります。
そもそも自分で描いていないイラストを、勝手にいじったり譲渡・販売はしてはいけませんよね。
写真トレースイラスト「祇園祭写真事件」
「自分で撮った写真のトレスはOK」とされるのは、お絵描きさんならご存知だと思います。
フリー素材の写真や、構図トレスOKの写真であればトレスは問題ありません。
最近はフリー素材サイトであっても、手違いやサイトの違反行為で「フリーじゃない」可能性があります。
使用の際は注意してください。
もし著作権フリーでない写真をトレスした場合、写真の著作権侵害にあたります。
これについても、実際に有罪判決を得た裁判ケースが存在します。
「祇園祭写真事件」と呼ばれたこのケースは、雑誌の表紙に使用された祇園祭の写真をモチーフに描かれました。
水彩画で描かれたイラストは、写真と比べて人物や構図に類似点が多かったそうです。
その結果、写真家の「表現」を盗み利用したとして著作権侵害の判決となりました。
このケースは、オリジナル作品を改変する「二次的著作物(翻案権)」にあたります。
祇園祭写真事件は、翻案権が事後的に許諾された形で幕を閉じました。
トレス問題「豆腐パッケージ事件」
豆腐のパッケージに、イラストを勝手に使用されたというケースです。
豆腐のパッケージに使用されたイラストは、実は江戸時代の浮世絵を模写したものでした。
そのため、元の絵を描いた人と何の関係性もなく、敗訴という形で幕を閉じました。
似たイラストであっても、模写された絵が元の絵を描いたであろう人と違えば、当然ですがパクリとして扱われることはありません。
第三者に著作権侵害を指摘されたら?
第三者によって、「パクリ」として晒されたお絵描きさんの多くは、泣き寝入りをせざるを得なくなります。
よく「パクってないなら、堂々とこれからもイラストを描けばいい」と言われます。
正直言って、そんなのはよほど図太くないと無理です。
全く知らない人が、自分のイラストを「興味本位」で見るようになるからです。
純粋に好きだと言ってくれる人のなかに、いつでも晒せる準備をしている人間が紛れ込むのです。
キリストの晩餐会に参加したユダが紛れていると考えてみてください。
私たちは神様ではありませんから、キリストみたいに裏切られた後許せるほど懐深くありません。
ツイッターなどのSNSも同じです。晒し行為は、SNS上の相手を殺す行為となんら変わらないと私は思います。
肉体的に傷つけられることはありませんが、心は深く傷つくのです。
第三者にとっては正義感かもしれません。
しかし、先述したように「名誉棄損」という法律違反を犯している可能性があります。
第三者に非を唱えるのではなく、元の絵を描いた人に連絡する
著作権問題は親告罪です。
第三者に対して「自分はやっていません」と言っても無意味です。
まずは、元の絵を描いた人と言われる人に直接連絡を取ってください。
ツイッター上の方であれば、ツイッターのDMやリプで連絡してみましょう。
ネット上にイラストを掲載しているお絵描きさんの多くは、何かしらの方法で連絡することができるはずです。
元の絵を描いた方には、事の経緯を分かりやすく説明してください。
そして、パクリ疑惑が上がったイラストを相手に見せて、相手から見たイラストがどう見えるかを判断してもらいます。
せっかく自分で描いたイラストを、そのような形で見せるなんて正直つらいです。
しかし大事にしないためにも、冷静な話し合いをしていきましょう。
もしも「パクリ」と言われたら
元の絵を描いた人にパクリだと言われた場合、どうしても納得がいかないのであれば名誉棄損で訴えることもできます。
穏便に済ませるのであれば、諦めてアカウントを変えてやり直すか、絵柄を変えていくしかありません。
多くのお絵描きさんが、アカウントを変えてまたやり直しています。
しかし、アカウントを毎回特定し晒し上げる行為を行う方も中にはいます。
「すべてが二次創作」と言われるご時世ですので、元の絵を描いた人がパクってる可能性も無きにしも非ずです…。
本人に伝えている以上よほどの性格の持ち主でなければ、注意喚起程度で済まされるでしょう。
連絡が取れなくても毅然とした態度でいること
もしどうしても連絡が取れない場合、第三者に連絡する必要はありません。
多くの場合、どちらからも一切無視されたら強く言うことをやめます。
心配しているフォロワーさんのためにも、まずは安心させるために落ち着いた対応をすべきです。
このとき、「どうしよう…」や「やってないのになんで?」といった不安を煽るようなことをつぶやかない方が良いでしょう。
不安をつぶやいてしまうと、フォロワーさんの不安を煽るだけではなく、自分の頭も混乱してしまいます。
また、そのつぶやきを見たことで、攻撃をしかけるような人も中にはいるのです。
著作権侵害を指摘された実体験
私はちびろぐのイラスト用に作ったアカウントで指摘されました。
第三者からの指摘であり、結果として大事には至っていません。
相手のプライバシーに関わるので名前は伏せておきます。
出鼻くじかれた感は正直感じました。
そのときに指摘した第三者の方は、プロフィール欄に「出戻り」「垢消し常習犯」など記載されていたので捨て垢のようでした。
引用リツイートで
という命令形での指摘を受けました。
私自身まったく身に覚えがなかったので、最初はどうすべきかうろたえたのが本音です。
しかし、イラストの楽しさを伝えるブログを書いている手前
と感じました。
そこで私が取った行動が、第三者の発言に出た「あままつさん」にコンタクトを取ることでした。
指摘した第三者のお名前は伝えていません。
ただDMで「パクリだと言われたので、イラストの確認をしてほしい」という旨を、イラストを添えて送りました。
*カクテルシリーズ*
モジート
ライムのすっきり爽やかカクテル#フリーアイコン #お絵描き好きさんと繋がりたい #創作イラスト pic.twitter.com/JAReVIJO74— 波音子 (@NaMiNeK0) 2019年5月13日
こちらが指摘されたイラスト。
正直心臓がバクバクしていました。この間は指摘を受けたこともつぶやかず、どこが似ているのか?とずっと考えていました。
あままつさんのイラストはこちらです。
使用可能範囲についてはAboutをお読み下さい。https://t.co/eXK2khiuHQ pic.twitter.com/92MQIOOars
— あままつ (@ama_mt_) 2019年6月19日
私のようなアマチュアイラストと、あままつさんのイラストが似ているとはどうしても思えませんでした。
私から見ると、やっぱり塗り方も絵柄も違うように見えます。
ただ、私が「オリジナルのキャラクターを描きたい」と思って1年ほど練習させていただいた塗り方だということに気が付きました。
当時の私の「描いている方の名前を確認せずに練習する」という考えの甘さが招いたのかもしれません。
そしてあままつさんのイラストのなかに、私が描いたイラストと似た構図のものも見つけました。
飲み物を持っている女性のイラストです。
それを見た時「パクリと思われても仕方がないのかもしれない」と感じました。
今冷静に見てみると、正直似ていない…。
似ていなくてもなんでも、私は
そう考えていました。
しかし、あままつさんから頂いたお返事はとてもやさしく、こちらに配慮されたものでした。
うれしく思います。
さらに、私のイラストに対しても
私も夏のイラストを描きたくなりました。
と、コメントまでくださいました。
泣きました。本当に救われました。ありがとうございました…!
あままつさんのイラストを見て練習した当時の私も、こんな風に言われるときが来るなんて夢にも思っていませんでした。
第三者であってもご本人に報告するのは間違いじゃない
著作権に関して、あままつさんとお話する機会にも恵まれました。
あままつさんにも承諾を得て、私の「著作権」に関する見解をここに記します。
あままつさん自身、第三者の方から「イラストを模写されているのではないか」という連絡を多々頂いていたそうです。
模写だけではなく、トレース後に髪型を変えるなどして贈り物イラストにされていたこともあると聞きました。
この話を聞いたとき、私にパクリだと言った方も、あままつさんの一ファンとして何か思うことがあったのだと感じました。
しかし、それをあままつさん自身にお伝えしなかったことが悲しかったです。
元の絵を描いた方しか、著作権侵害であると主張することができません。
だからこそ、パクった可能性のある方を元の絵を描いた人に直接伝えてほしいです。
パクったかも分からない人を引用リツイートで公に晒すのは、第三者の方にもさまざまな危険があります。
今の日本には裁判でしか白黒が分からないほど、著作権に疎い方が多くいます。
それは大人も子どもも変わりません。
多くの方が傷つかないためにも、パクリかもしれない人を見かけた場合は、元の絵を描いた人に一度報告することをオススメします。
また、報告された方も「なんだと?!」と感情的にならず、冷静に「自分のイラストに酷似しているかどうか」を確認してください。
イラストをパクっていないなら、はっきり主張する
著作権問題の事件について調べていたら、さまざまなケースを見つけることができました。
ここに紹介していませんが、パクっていないと主張したのにかかわらず、元の絵を描いた人が「パクられた」とSNS上で執着に攻撃しているケースも実際にあります。
パクられたといわれたお絵描きさんは、SNS上すべてで攻撃を受け、結果としてイラスト界隈から姿を消しました。
主張しても、どうにもできないときがあるかもしれません。しかし、それでも主張することを辞めないでください。
誰かがあなたのイラストで幸せを感じています。
ほとぼりが冷めるのを待ってから主張するのもひとつの手です。
何が「パクリ」にあてはまるのかもう一度考えてみる
第三者であれお絵描きさんであれ、一度何がパクリと言われるのか?について考えてみてください。
たくさんの方が「パクリ」という定義についてあやふやに考えています。
パクリ問題は、そのまま著作権問題に直結します。
万引きと窃盗罪のように、ただ言い方が違うだけ。
イラストの雰囲気が似ているから?輪郭が似ているから?色使いが似ているから?
たとえばイラストの練習として模写をして、その過程でSNS上にオリジナルとして掲載していたら著作権違反になります。
しかし、偶然似てしまうのは今では「よくある事」なのです。
もちろん私のイラストも例外なく、誰かと似ていることもあるでしょう。
きっとたくさんのイラストが、お絵描きさん達のイラストに似た部分を持っています。
著作権問題は、トレスをしたり自分の中で「模写した」という自覚がある場合に発生します。
第三者が見てわかることではありません。
しかし、第三者が見ることで気付くことがあります。
むやみやたらに傷つけるのではなく、「トレスかな?」と感じたら、一度元の絵を描いた人に報告するのが得策です。
私は今回あままつさんとお話したことで、お互いの意見が合い、著作権について深く考えるきっかけとなりました。
SNS上で顔を見ず、何でも気軽に言える現代だからこそ、ほんの少しだけでも相手の立場に立って考えてみてください。